芽室町議会では、北海道大学公共政策大学院教授の今井太志氏を講師に、「地方財政の現状と道内町村が直面している課題」をテーマに議員研修を開催しました。

講師は総務省(旧自治省)や東京都で財政実務に携わった経験を持ち、現在は地方財政を専門に研究されています。今回の研修では、地方財政の現状だけでなく、人口減少時代に自治体がどのような視点で行政運営を行うべきかについて、多くの示唆をいただきました。

「財政が厳しい」という時代は変わりつつある

行政では長年、「財政は厳しい」という説明が繰り返されてきました。

しかし現在、国税収入は過去最高水準を更新し、地方税収も着実に増加しています。講師は「財政が悪い」という固定観念だけでは現状を正しく理解できないと指摘しました。

また、自治体全体では基金(貯金)は増え、地方債(借金)は減少傾向にあります。大切なのは、お金を持っていることではなく、「何のために使うのか」という視点です。

基金を積み上げることが目的ではなく、将来につながる投資へ積極的に活用することが自治体経営には求められるという考え方が印象的でした。

地域の未来を支えるのは「稼ぐ力」

講師が繰り返し強調したのは、「地域が稼ぐ力」の重要性です。

地域内でお金を循環させることも大切ですが、それ以上に、農業や観光、地域産業などを通じて地域外から新たな所得を獲得し、地域全体を豊かにすることが重要だと説明されました。

若い世代が地域で働き、挑戦し、成長できる仕事があることが、人口減少時代の自治体には欠かせない条件です。

そのためには、医療・福祉をしっかり維持した上で、産業振興や人材育成など未来への投資を進めていく必要があります。

最大の課題は「人材不足」

講師は、これからの自治体経営において最も深刻な課題は「財政」ではなく「人材」であると指摘しました。

全国では自治体職員の採用が年々難しくなり、応募者不足や若手職員の離職が深刻化しています。

今後は、

  • 社会人採用の拡充
  • 若者が成長できる職場づくり
  • 自治体間の事務共同化
  • 広域連携の強化

など、従来とは異なる組織運営が必要になるとの見通しが示されました。

特に北海道のような広域自治体では、人材確保の難しさがより大きな課題となっています。

地方自治を守るために必要なこと

質疑応答では、「地方分権が後退し中央集権化が進んでいるのではないか」という質問もありました。

講師は、福祉や医療など住民生活に直結する分野では、全国どこでも同じサービスを求める声が強くなり、結果として国が制度を細かく定める傾向が強まっていると説明しました。

一方で、地方自治を守るためには、自治体自身が財源を活用し、地域独自の成果を示していくことが重要だとも話されました。

「基金を積み上げるだけでは地方自治は強くならない。地域の未来のために投資し、成果を生み出してこそ自治の価値が高まる」という言葉が印象に残りました。

芽室町への期待

講師は、芽室町について、

  • 農業を中心とした産業基盤がしっかりしていること
  • 行政運営が比較的安定していること
  • 町立病院も現時点では健全な経営状況であること

などを評価されました。

その一方で、人口減少や人材不足は芽室町も例外ではありません。

今後は、財政の健全性を維持しながら、若い世代が働き、挑戦できる環境づくりや、地域が稼ぐ力をさらに高める取り組みが重要になるとのお話でした。

おわりに

今回の研修では、「財政が厳しいから何もできない」という時代から、「財政の余力を未来への投資へどう活かすか」という新たな自治体経営の視点を学ぶことができました。

議会としても、基金や借金の数字だけを見るのではなく、「地域の未来にどう投資するのか」「若い世代に選ばれるまちをどうつくるのか」という視点を持ちながら、行政運営をチェックし、政策提案につなげていきたいと思います。

人口減少という大きな変化の中でも、芽室町が持続的に発展していけるよう、今回の研修で得た知見を今後の議会活動に活かしてまいります。