令和7年度の上水道事業会計決算では、単年度の黒字・赤字だけでは見えてこない、人口減少時代の水道経営の課題が浮かび上がりました。

今回の決算審査で特に重要だったのは、「現在、水道事業が成り立っているか」だけではなく、「将来も水道を維持していけるのか」という視点です。

全体では黒字。しかし中身を見ると課題も

令和7年度の水道事業会計では、経営の健全性を示す経常収支比率は103.44%となり、最終的には約1,246万円の純利益を計上しました。

一見すると、経営上大きな問題はないようにも見えます。

しかし、令和7年度は物価高騰対策として7月・8月請求分の水道基本料金を減免しており、その減収分は町からの補助金で補填されています。

さらに、今後を考える上で重要なのが人口減少です。

令和7年度末の上水道の給水人口は14,407人で、前年度から146人減少。給水戸数も26戸減少しました。

町自身も、節水型社会の定着や給水人口の減少から、今後の給水収益の拡大は見込みにくいとの認識を示しています。

つまり、今は黒字であっても、今後料金収入が大きく伸びていくことは期待しにくいという構造にあります。

簡易水道では、より厳しい経営状況が明らかに

今回の質疑で特に重要だったのが、上水道と簡易水道を分けて経営状況を見る視点でした。

会計全体では利益が出ていますが、セグメント別では、

上水道は約4,900万円の黒字、簡易水道は約1,843万円の赤字

となっています。

簡易水道は農村部に集落が点在しています。一方、料金は公平性の観点から市街地と同じ体系となっているため、料金収入だけで維持管理費を賄うことが難しいという構造的な問題があります。

質疑に対して町からは、簡易水道について、

減価償却相当分の収入を確保できておらず、将来の更新に備えた十分な資金がある状況ではない

という認識も示されました。

これは単年度の赤字額以上に重要な問題です。

水道施設はいずれ更新しなければなりません。そのための資金を現在の事業収入の中から十分に確保できていないということは、将来の更新時期を迎えた際、その費用を誰がどのように負担するのかという問題につながります。

人口は減る。しかし施設更新は待ってくれない

水道事業の難しさはここにあります。

人口が減ったからといって、水道管を単純に人口減少率と同じ割合で減らせるわけではありません。

一方で施設の老朽化は進みます。

令和7年度の上水道事業の有形固定資産減価償却率は56.01%で、前年度から1.20ポイント上昇しました。

令和7年度にも配水管の布設換えや量水器の更新、浄水場の制御盤更新など、さまざまな建設改良工事が実施されています。

さらに、昨年度策定した水道施設整備基本計画では、重要施設や送水管などの耐震化も課題となっています。

つまり今後は、

料金収入は減少する可能性が高い。
しかし、老朽化・耐震化への投資は必要になる。

という、非常に難しい局面に入っていきます。

一般会計からの負担も検討へ

決算審査では、今後の施設整備費をどのように確保していくのかについても議論になりました。

町からは、耐震化について国の補助制度など活用可能な特定財源を確認しながら、現在改定を進めている水道事業の「経営戦略」に反映させていく考えが示されました。

また、特に経営条件の厳しい簡易水道については、一般会計から必要な繰入れを行うことも含めて協議していくとの答弁がありました。

水道は生活に不可欠なインフラです。

採算が取れないから農村部への給水をやめる、という単純な話にはなりません。

だからこそ重要なのは、

「公共サービスとして維持するために、町全体としてどこまで負担するのか」

を明らかにすることです。

これは水道料金だけの問題ではなく、一般会計、つまり町全体の財政にも関わる問題になっていきます。

次の焦点は「経営戦略」

今回の決算審査では、令和8年度に改定する水道事業の経営戦略の中で、今後の料金、施設整備費、財源、一般会計からの繰入れなどを整理していくことが確認されました。

その意味では、今回の決算審査で結論が出たわけではありません。

むしろ、

「今後何を明らかにしなければならないのか」が見えてきた

という段階だと思います。

経営戦略が示された際には、

  • 人口減少によって料金収入がどこまで減少すると見込んでいるのか
  • 耐震化・老朽化対策に今後いくら必要なのか
  • 現在の更新ペースで必要な更新に追いつけるのか
  • 水道料金を将来どうするのか
  • 簡易水道を維持するため一般会計からどの程度の負担が必要になるのか

といった点を、具体的な数字で確認する必要があります。

決算から「これから」を見る

決算審査というと、「昨年度いくら使ったのか」を確認するものと思われがちです。

しかし、本当に重要なのは、その数字からこれから何が起こるのかを読み取ることだと考えています。

今回の水道事業会計では、全体としては黒字を確保しています。

その一方で、人口減少による料金収入の伸び悩み、簡易水道の赤字構造、施設の老朽化、耐震化、将来の更新財源という課題が見えてきました。

そしてもう一つ、今回十分に掘り下げられなかった数字があります。

上水道の有収率が85.1%となり、前年度から9.3ポイント低下したことです。

配水量が増えている一方、料金収入につながる有収水量は減少しています。この原因が一時的なものなのか、漏水や施設老朽化など構造的な要因を含んでいるのかは、今後確認していきたいポイントです。

水道は、日常生活の中では「蛇口をひねれば水が出る」ことが当たり前のインフラです。

その当たり前を10年後、20年後も維持していくために、料金負担、税負担、施設更新のバランスをどう取っていくのか。

令和7年度決算で見えてきた課題を、令和8年度の経営戦略がどのように具体化するのか、引き続き注視していきます。