令和7年度決算審査・財政分析で見えてきた芽室町の現在地
令和7年度決算審査では、各事務事業の審査に先立って、まず町全体の財政状況について質疑が行われました。
今回の財政分析で特に印象的だったのは、単に「財政が厳しい」という確認にとどまらず、人口減少を前提とした今後の行政運営について、町からかなり踏み込んだ考え方が示されたことです。
令和7年度の経常収支比率は91.6%となりました。令和3年度の81.2%から比べると、5年間で10ポイント以上上昇しています。経常一般財源余剰額も、令和3年度の約15億円から令和7年度は約7億円まで縮小しており、町の財政余力が小さくなっている状況が数字からも見えてきます。
一方で、町税や地方交付税などの経常一般財源が増えていないわけではありません。それ以上の速度で、人件費、物件費、扶助費、公債費などの経常的な支出が増えていることが、財政硬直化の大きな要因となっています。
町もこの状況について、「厳しい」「財政の硬直化が進んでいる」との認識を示しました。
人件費は増加、職員数は「現状維持」から転換へ
令和7年度の人件費は約22億4,090万円で、前年度から約2億3,700万円増加しました。
この増加については、職員数の増加ではなく、給与改定や期末・勤勉手当などの増が主な要因との説明がありました。
これまで町の職員数適正化方針では、「職員数現状維持」を基本としてきました。
しかし、現在策定中の新たな適正化方針について、総務課長からは、
「大きな方向性としては、現状維持というよりは減らしていく方向になるのではないか」
との答弁がありました。
これは大きな方向転換です。
ただし、単純に職員数を減らせばいいという話ではありません。
町では令和6年度から「1課1DX」などを進め、70以上の業務改善事例を集約しているとのことです。今後は、DXやAI、外部委託、業務改善によって実際にどれだけ業務量を減らすことができたのかを可視化し、その結果を職員配置や職員数の適正化につなげていく必要があります。
人だけを減らし、仕事をそのまま残せば、職員負担の増加や行政サービスの低下につながりかねません。
重要なのは、
「人を減らす前に、仕事をどう減らすか」
という視点です。
人口減少に合わせて「賢く縮む」
今回の質疑では、人口減少社会への対応についても明確な答弁がありました。
町は今後の行政運営について、
「人口減少社会をしっかり認識し、町の仕事も人口減少仕様にしていく」
「賢く縮む」
という考え方を示しました。
その具体策として、
公共施設の選択と集中、ライフサイクルコストを踏まえた投資判断、受益者負担の見直し、DXによるコスト削減、適正な職員配置などが挙げられています。
さらに、令和8年度の予算編成では「選択と集中」をテーマとして進めているとの説明もありました。
人口が減少しても、道路、水道、公共施設など一定のインフラは維持しなければなりません。
利用者が減ったからといって、単純にすべてを廃止できるわけではありません。
だからこそ、これからは「すべてを維持する」のではなく、
何を残すのか。
何を縮小するのか。
何を統合するのか。
何を将来への投資として残すのか。
その選択がこれまで以上に重要になります。
財政調整基金11億円は十分なのか
令和7年度末の財政調整基金は約11億円。
標準財政規模に対する割合は約13.5%です。
町からは、一般的には標準財政規模の10%から20%程度が一つの目安とされており、現状では「11億円を維持することが現在できる範囲」との説明がありました。
一方で、近年の災害リスク、物価上昇、人件費の増加、特別会計や企業会計への繰出しなどを考えた場合に、本当に11億円で十分なのかという点については、今後の総合計画の中で改めて適正水準を整理するとの答弁でした。
財政調整基金は、町にとっていわば「最後の砦」です。
現在の残高を単に「適正」と固定的に考えるのではなく、今後のリスクをどこまで見込むかによって必要な水準は変わります。
ふるさと納税をどこまで頼るのか
ふるさと納税についても重要な議論がありました。
町は、ふるさと応援寄附金について、
「寄附額の半分程度を事業に充当するのが理想」
との考え方を示しています。
現在は子育て支援や障害者支援など、総合戦略に位置付けられた経常的な事業にも充当されています。
一方で、今後については、
「できるだけ単一の事業に重点して使うことが理想」
との考えも示されました。
ふるさと納税は非常に有効な財源である一方で、寄附額は毎年保証されたものではありません。
もし寄附額が大きく減少した場合、現在寄附金を充当している事業を一般財源で維持するのか、それとも事業自体を見直すのか。
この判断は今後ますます重要になります。
不安定な財源を、恒常的に必要な支出にどこまで使うのか。
これは財政運営上、慎重に考える必要がある論点です。
「全事務事業一斉見直し」の成果はこれから
以前の一般質問で町長は、財政状況の厳しさを踏まえ、全事務事業の一斉見直しを行う考えを示していました。
令和7年度の事務事業評価では592事業が公表されています。
今回、その一斉見直しによって、実際にどのような事業を廃止・縮小・変更し、どれだけ財政効果があったのかを確認しました。
町の答弁では、令和7年度に大きく一つの事業を廃止したような事例はなく、補助金の再検討や関係機関への負担金の廃止など、小規模な改善が中心だったとのことです。
令和7年度から9年度までの3年間を集中検討期間としており、本格的な成果は今後出していくとの説明でした。
町長からは、既存事業の廃止や縮小には、関係者への説明など相当な労力が必要であること、新たな総合計画との整合も必要であることが語られました。
つまり、令和7年度は本格的な「スクラップ」の年というよりも、見直しの準備・調整段階だったといえます。
今後は、
「見直しました」
ではなく、
「何をやめたのか」
「何を縮小したのか」
「いくら削減できたのか」
という具体的な結果が問われることになります。
「攻めるときは攻める」
厳しい財政状況の一方で、町からはもう一つ印象的な言葉がありました。
「攻めるときは攻める」
という考え方です。
町は、ふるさと納税や基金なども活用しながら、将来に必要な投資については実施していく考えを示しています。
令和7年度についても、
DX、まちなか再生、新嵐山スカイパーク再生、脱炭素などを「再生と転換」に向けた取り組みとして位置付け、「一定程度、足掛かりを築いた」と評価しています。
町長も、
現在の行政サービスを守ることと、将来への投資の両方を実現していきたい
との考えを示しました。
これは非常に難しい判断です。
財政だけを考えれば、投資を減らせばよい。
将来投資だけを考えれば、現在の行政サービスを削ればよい。
しかし、実際の行政運営ではそのどちらかだけを選ぶことはできません。
だからこそ、
「何を攻めるのか」
その判断基準が重要になります。
これから問われるのは「何を選ぶか」
今回の財政分析を通じて、町の方向性はかなり明確になりました。
人口減少を前提にする。
賢く縮む。
公共施設は選択と集中。
DXで業務を改善する。
職員配置も見直す。
受益者負担についても見直す。
一方で、必要な将来投資は続ける。
問題は、その具体的な選択です。
これからの決算審査では、
「財政が厳しいから削減すべき」
という単純な議論ではなく、
この事業はなぜ残すのか。
なぜこの事業には投資するのか。
その結果、町民にとって何が良くなったのか。
成果が出なかった場合、いつ見直すのか。
そこまで踏み込んで確認していく必要があります。
令和7年度決算は、単なる過去の支出の確認ではありません。
人口減少時代の芽室町が、
「何を残し、何を縮め、何に投資していくのか」
その選択を始める分岐点にあるのだと感じています。



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