令和7年度決算審査では、3款民生費について、社会福祉協議会への支援、障がい者支援、子育て支援、発達支援など幅広い質疑が交わされました。

今回の審査を通して見えてきたのは、福祉を取り巻くニーズが変化する中で、これまでの事業や施設をそのまま維持するのではなく、「本来必要な支援は何か」「現在の方法で本当に必要な人に届いているのか」を改めて検証する必要性です。

審査で交わされた主な議論を振り返ります。

地域福祉の中核を担う社会福祉協議会

社会福祉協議会活動支援事業では、町が社会福祉協議会を今後どのように位置づけ、支えていくのかについて質疑がありました。

令和7年度の町から社会福祉協議会への支援額は約3,381万円。町は、地域福祉計画と社会福祉協議会の事業計画が一体的な関係にあり、社会福祉協議会を「地域福祉の中核を担う存在」と位置づけていると説明しました。

今後についても、行政にはできない柔軟な活動を生かしながら、地域に入り込み、住民がどのように暮らし、どのような困りごとを抱えているのかを把握していく役割を期待しているとのことでした。

一方、役割が広がれば、それを担う人材も必要になります。

町と社会福祉協議会との協議の中では、専門職の確保や、実際に地域へ出向くことのできるスキル・経験を持った職員の確保が課題として挙げられていることも明らかになりました。

町では、地域福祉の実働を担う職員の人件費について10分の10で補助していますが、それでも人材確保には苦慮しているとの答弁でした。

今後、複合的な生活課題への対応や地域での支え合いがさらに求められる中で、単に社会福祉協議会へ「地域福祉の中核」という役割を求めるだけではなく、その役割を持続的に担える人材と専門性をどう確保していくのかが課題となりそうです。

新設された基幹相談支援センター、初年度の実績は53件

障がい者相談支援事業では、令和7年度から新たに開設された基幹相談支援センターについて質疑がありました。

令和7年度の相談件数は53件で、身体障がい、知的障がいに関する相談が多かったとのことです。

ただし、基幹相談支援センターの役割は、直接相談を受けることだけではありません。

地域にある相談支援事業所を専門的に支援するとともに、自立支援協議会を通じた事業所間の連携を進め、新たに「事業所連携会」も設置。事業所同士が顔の見える関係をつくり、必要な人を適切な支援へつないだり、情報共有したりする機会をつくったことも初年度の成果として挙げられました。

また、高齢者の地域包括支援センターと同じ事務所に設置していることも特徴です。

障がいのある本人の高齢化や、家族が支援できなくなる「親亡き後」などを考えると、障がい福祉と高齢者福祉を分断せずに相談を受けられる体制には意味があります。

令和7年度は「さまざまな声を聞き、必要な支援へつなぐ」ことに重点を置いた初年度でした。今後は相談件数だけではなく、相談を受けた結果として必要な支援へどれだけつながったのかという成果も重要になってきます。

生活体験住宅は「利用者が少ないから廃止」なのか

今回、複数の委員から質疑が重ねられたのが、生活体験住宅管理運営事業です。

障がいのある方が将来の自立生活に向けて、一人暮らしを体験するために令和2年度から実施されてきました。

令和7年度の利用実人数は2人、延べ10人。令和8年度から事務事業は廃止されています。

しかし、審査で6年間の検証内容を確認すると、単純に「利用者が少なかったから廃止した」という話ではありませんでした。

実際に利用した方の中には、この体験をステップとして一人暮らしやグループホームへの入居につながった方がおり、町も一定の成果はあったと評価しています。

一方で、個別に利用を勧めても、本人の気持ちが固まっていても家族が宿泊を伴う一人暮らし体験を心配し、利用に踏み出せないケースがあったとのこと。

さらに、この6年間でグループホームや相談支援事業所が増え、町外へ就労する方がいるなど、障がいのある方を取り巻く生活環境も変化してきました。

そのため町は、

「自立支援のニーズがなくなった」のではなく、「宿泊を伴う一人暮らし体験」という方法と現在のニーズが合わなくなってきたのではないか

と分析。

住宅という形にこだわらず、自立を支援する機能自体は別の形で継続する「発展的な見直し」を行ったと説明しました。

事業は廃止、施設は休止―残された建物をどうするのか

一方、生活体験住宅については、事業終了後の整理についても質疑がありました。

令和8年度は予算を計上せず事務事業を廃止していますが、生活体験住宅の設置条例や規則は現在も残っており、施設そのものは「廃止」ではなく「休止」という状態です。

町は現在、障害者福祉計画の見直しに伴って家庭訪問や事業所へのヒアリングなどを行っており、ニーズを確認した上で年度内に条例等の廃止手続きを進める考えを示しました。

また、これまで内装などにも経費を投入してきた建物について、今後どのように活用するのかという質問もありました。

これに対して町は、現時点では具体的な活用方法は決めておらず、公共施設であることから関係課と協議して検討していくと答弁しています。

つまり現状は、

自立支援という機能は別の形で継続する一方、事務事業は廃止、施設は休止、条例は廃止手続きを予定し、建物の今後は未定

という状況です。

事業を見直す際には、事業そのものだけではなく、条例や代替する支援、そして残された公共資産をどうするのかまで一体的に考える必要があります。

保育料の長期滞納、収納率は2.6%に

認可保育所保護者負担金については、過年度分の収納率が前年度15.5%から2.6%へ大きく低下したことについて質疑がありました。

過年度分の調定額73万4,105円に対して、収納できたのは1万9,200円。未収額は71万円余りとなっています。

特に、令和元年度以前の滞納が約54万円を占め、対象者は4人。長期化しているケースについては、通常の督促や声かけだけでは対応が難しいとの認識が町から示されました。

今後は担当課だけでなく納税担当とも協議し、長期化した案件への対応を検討していくとのことです。

また、新たな滞納を長期化させないため、児童手当からの申出徴収などの方法も検討していく考えが示されました。

単に収納率を上げるだけではなく、長期滞納になる前の早い段階でどう対応するかも重要になります。

「相談に来てもらう」から家庭へ出向く支援へ

児童福祉支援事業では、令和7年度から始まった子育て世帯訪問支援事業について質疑がありました。

令和7年度の実績は利用者1人、実施2回。

町は、件数は少ないものの、課題を抱えている家庭へ支援員を派遣したことで、その家庭の育児負担の軽減につながったと評価しています。

この事業の特徴は、相談窓口を設けて家庭から相談に来てもらうだけではなく、支援する側が家庭へ出向けることです。

家庭が抱える課題は、育児だけとは限りません。

虐待、育児不安、生活困窮、ヤングケアラーなど、複数の問題が重なっている可能性もあります。

訪問を入口としてそうした課題を早期に把握し、必要な支援へつなげられるか。

これからの福祉には、相談窓口で「待つ」だけではなく、支援につながりにくい人のところへ出向くアウトリーチの視点がより重要になっていきます。

個別相談0件――ペアレントメンターは必要なくなったのか

発達支援システム推進事業では、ペアレントメンターについて質疑がありました。

ペアレントメンターは、発達に不安を抱える子どもを育ててきた先輩保護者が、自らの経験を生かして他の保護者を支える取組です。

令和7年度は報償費が前年度から大幅に減少。その主な理由は、1対1の個別相談が0件だったことでした。

町の分析では、保護者自身がインターネットなどで情報を集めるようになったことや、学校の先生、発達支援センターなど、すでに相談できる専門職がいることで、先輩保護者への個別相談を希望しないケースが多かったとのことです。

しかし、審査では「利用がなかったから必要ない」と判断するのではなく、ペアレントメンターならではの価値についても議論されました。

専門職からの支援と、同じ悩みを経験してきた先輩保護者によるピアサポートは、必ずしも同じものではありません。

町も、「先輩保護者の経験は町にとっての財産」と評価しています。

その上で令和7年度の反省点として示されたのが、「必要なタイミングで経験を届けられていたか」という点でした。

年長児の保護者なら小学校への進学、小学6年生の保護者なら中学校への進学など、子どもの成長過程には不安が高まる時期があります。

相談を待つだけではなく、そうした時期にタイムリーに先輩保護者の経験を届けることができるか。令和8年度以降の取組につなげていく考えが示されました。

「利用が少ない=不要」ではない

今回の民生費の審査を振り返ると、いくつかの事業に共通する論点がありました。

生活体験住宅は、利用実績が少ないから単純に自立支援そのものをやめるのではなく、目的を残して手法を変えるという判断がされました。

ペアレントメンターも、個別相談が0件だったから必要ないとするのではなく、価値を残しながら届け方を見直すという方向性が示されました。

子育て世帯訪問支援では、窓口で待つ従来型の相談だけでなく、家庭へ出向く支援が始まっています。

社会福祉協議会には、さらに地域へ入り込み、住民の困りごとを把握する役割が期待されています。

福祉を取り巻く環境や住民ニーズは変化します。

だからこそ決算審査では、

「何人利用したのか」
「いくら使ったのか」

だけではなく、

「何のために行っている事業なのか」
「その目的は達成できたのか」
「現在の方法が今のニーズに合っているのか」
「必要な人に本当に支援が届いているのか」

まで検証していくことが重要です。

事業を続けることそのものが目的になってはいけません。一方、利用実績が少ないという理由だけで必要な機能まで失ってしまってもいけません。

残すべき支援は残しながら、社会環境やニーズに合わせて、その届け方や仕組みを変えていく。

今回の民生費の決算審査では、これからの福祉を考える上で、そんな重要な視点が見えてきました。